reference track の使い方、コピーせずに基準にする

ビートを仕上げて10回続けて聴くと悪くない。ところが Spotify を開いた瞬間、自分が作ったものだけ小さく聞こえる。その差を埋めるためにあるのが reference track だ。コピーする曲ではない。信頼している曲をセッションに並べて置き、自分のビートがどこで持ちこたえ、どこで自分をだましているかを教えてくれる基準だ。
多くの人はこの助言を聞いて、いちばん大事な部分を飛ばす。曲を正しく選ぶことと、音をひとつ判断する前に音量をそろえることだ。
reference track とは何で、何ではないか
リファレンスは、作業中の曲と同じレーンの完成した商用曲で、頭に入っていて、スマホでも車でもヘッドホンでも聴いたことのあるものだ。プロジェクトには2本目のトラックとして入り、ほとんどはミュートされている。切り替えて答える問いはひとつ、自分のビートはこの隣で通用するか。
組み立て直す曲ではない。アレンジ、ドラムパターン、メロディをそのまま写すと、ビートは模造品になる。リファレンスが新しい曲なら、それは誰にもわかる。リファレンスは基準であって、テンプレートではない。
ビートの場合、ジャンルのラベルよりレーンのほうが大事だ。歌もののフックがある暗いメロディックな曲は、余白のあるメロディックなビートのリファレンスとして妥当だ。密度の高い drill はそうではない。ドラムの役割が違うので、自分のアレンジがそもそも背負っていない重さを一晩中追いかけることになる。
10曲ではなく、2〜3曲
3曲で足りる。低域用に1曲、ボーカル用に1曲、そして自分のビートをこう鳴らしたいという感覚に合う曲が1曲。それ以上あると、作業ではなく切り替えに時間を使う。
- 複数の場所で聴いた曲を選ぶ。スタジオのヘッドホンでしか成立しない曲は、リファレンスではなくお気に入りだ。
- アレンジの密度を合わせる。4つの要素でできたビートを、40の要素がある曲と比べても意味がない。
- 同じリファレンスを数週間使い続ける。毎回入れ替えるセットは、自分の癖について何も教えてくれない。
- 5年以上前の曲を1曲入れる。新しいリリースは、自分のビートと無関係な流行に合わせてミックスされている。
何も触る前の正直な A/B
いちばん多い失敗は、大きなマスターと自分のラフミックスを比べることだ。大きいほうが必ず勝つので、フェーダーを動かすだけでよかったビートに高域を足してしまう。判断の前に音量をそろえる。リファレンスを下げて、両方が同じ大きさに感じるところまで持っていき、もう一度聴く。気づいていた差の半分は消え、残ったものが本物だ。
次に、比べている間はマスターにリミッターをかけない。リファレンスが潰れていて自分のが潰れていなければ、聴こえているものの一部は処理であってバランスではない。リミッターは最後、バランスが決まってから入れる。
3つめは、モノで一度通すこと。モノでも成立する曲はセンターが強い。ステレオの広がりが消えた瞬間にキックやボーカルの居場所が失われるなら、問題は広がりではなく層にある。
下から上へ、順に聴く
層をひとつずつ進み、最初に見つかった本当の差で止まる。5つを同時に直すと、どれが効いたのか永遠にわからない。
- 低域。キックはリファレンスと同じ位置にいるか、それともベースとぶつかっているか。リファレンスのほうが軽く感じるなら、答えは足し算ではなく引き算のことが多い。
- ボーカルの居場所。インストにもある。声が座る帯域だ。リファレンスがそこを空けていて、自分のはメロディで埋まっているなら、誰も歌う前にアーティストとぶつかっている。
- 高域。リファレンスのハイハットやシンバルは、単体で聴くよりずっと落ち着いている。明るさは最初の1分はエネルギーに、10分後には疲れに変わる。
- ダイナミクス。曲はセクションの間で息をするか。3分間同じレベルに留まるビートは、最後のフックで行く先がない。
- 広がり。リファレンスで本当に広いのは何で、センターにいるのは何か。ほとんどの曲は見た目より狭く、広がりは1つか2つの要素が作っている。
聴こえた差を手順に変える
差のほとんどは4つの判断に落ちる。レベル、カット、センド、音の差し替えだ。低域がリファレンスより重いなら、EQ を握る前にサブを下げる。中域が混んでいるなら、あまり仕事をしていない楽器を見つけて下げる。ほかを削って穴を空けるより速い。
足りないのがレベルではなく音そのものなら、プラグインでは直らない。汚く録ったギターのループは処理してもきれいにならないし、別の系統のキックはリファレンスのキックの位置に座らない。変えるのは味付けではなく材料だ。だから一部のビートは1週間フォルダに戻り、音を1つ差し替えて帰ってくる。
Wild (With Hook) は逆のケースだ。同じ打点に3つのキックを重ね、クラップの下にスネアを重ね、上にギターのラインを通し、男性のフックがすでに書かれている EDM trap のビート。ここには余白がないので危険は逆側にある。上を埋めたまま、大きく見せようとして広いリードを足してしまうことだ。各層が自分の帯域を守っているので、レベルの変化はやはり聴こえる。自分の音で A/B の聴き方を練習するのに向いている。
リファレンスを聴くのはどこまでか
リファレンスが教えるのは曲の鳴り方で、何を書くかではない。ドラムパターン、フック、コード進行を組み直し始めた時点で、参照からコピーに移っている。出来上がるのは、あの曲が欲しかった人にしか売れないビートだ。
その衝動の正直な形が type beat だ。アーティストやプロデューサーのレーンで、好きな曲の音を一切使わずゼロから作るオリジナルのインスト。このサイトのカタログがそれで、trap のインストのようなページは、検索結果から推測する代わりに同じレーンのビートを20本聴けるようにある。録ったものをリリースするなら、先にライセンス条件を読むこと。無料ダウンロードはデモであって、リリースではない。
よくある質問
音楽でいう reference track とは何か
制作やミックスの間に比較の基準として使う、完成した商用曲。リリースには含まれず、セッションの中でミュートのまま置かれ、すでに信頼している曲とバランス、音色、ダイナミクスを比べるために使う。
reference track は何曲使えばいいか
2〜3曲。低域用に1曲、ボーカルの居場所用に1曲、全体の音色用に1曲。それ以上だと、曲を仕上げる代わりに切り替え続けることになる。
リファレンスの音量はそろえるべきか
必ずそろえる。大きい音のほうが良く聴こえるので、そろえていないリファレンスは、問題のなかったミックスに高域を足させ、圧縮させる。上げるのではなく、リファレンスを自分のレベルまで下げる。
reference track にプラグインは必要か
いらない。セッションの2本目のトラックで同じことができる。専用プラグインは音量を覚えて1キーで切り替えられるので便利だが、方法は変わらない。
リファレンスに似たビートはリリースできるか
同じスタイルのオリジナルなら出せる。それが type beat だ。アレンジ、メロディ、ドラムパターンのコピーは出せないし、曲の音源は許諾なしに使えない。

