drill beat の作り方:ハット、808 スライド、暗いメロディ

drill は下手に真似すると一番ばれるジャンルだ。ビートがそのジャンルだと分かる要素は、ほぼすべてドラムとベースにある。暗いピアノのループを普通の trap のパターンに乗せても、鳴るのは trap のままだ。下の順番で組むと、最初の4小節からビートは正しい方向を向く。まずハイハット、次にスネア、その次に 808、メロディは最後だ。
パターンを決めるのはハイハット
drill のハイハットはまっすぐな8分でも、trap の転がる3連符でもない。2拍の上に 3+3+2 のグリッドで並ぶ。3つ、3つ、そして2つだ。声に出して「いち に さん、いち に さん、いち に」と数えれば、音をひとつも読み込む前にノリが分かる。アクセントはグループの1つ目、4つ目、7つ目に来るので、パターンは行進ではなく足を引きずるように鳴る。
ハイハットはピッチも動かす。この音程の動きは飾りではなくリズムの一部で、2小節目の終わりで短く落とすとループが反転して聞こえる。2つ組の最後の音はヴァースで抜くことが多く、フックで戻せば何も足さずに大きく聞こえる。
スネアは小節の残り半分
ほとんどのラップでは、スネアは4拍のうち3拍目に落ちる。drill はそれを4拍目に動かすか、3拍目を飛ばして遅れて鳴らす。このズレは、どんな音色の選択よりもジャンルらしさに効く。よくある形は、1小節目の4拍目にスネアを置き、2小節目には何も置かない形で、着地するはずだった場所から常に半歩ずれた2小節のサイクルが生まれる。
キックは少なめにして、強い拍は 808 に任せる。スネアと 808 が毎小節そろって鳴ると、パターンは行儀よくなる。行儀がいいことは、drill がもっとも避けたいものだ。
808 は鳴らすのではなく滑らせる
ここでの 808 は旋律楽器で、尻尾の長いキックではない。ループのキーにチューニングし、長い音を伸ばし、音と音の間を滑る。グライドは、音が滑り込んでくるのではなく、最初から正しい音程で届くくらい短く設定する。
- 繰り返さず滑らせる。同じ音を繰り返すと trap になり、次の音へ曲がっていくのが drill だ。
- ルートに合わせる。808 がピアノとぶつかると、暗いのではなく音程が外れて聞こえる。
- 基本は1小節に1音。音の間の動きがメロディなので、小節を埋める必要はない。
- 隙間を残す。スネアの前に 808 を止めると、ドロップが重くなる。
- 歪ませすぎない。スマホのスピーカーで残る程度。スライドが潰れて聞こえるほどではない。
メロディはたいてい1小節
drill のループは短く、わざと繰り返す。ベル、音程のずれたピアノ、トーンを絞ったクリーンギターで、1小節に収まるマイナーのフレーズを弾く。ループに必要なのは 声が上に乗るだけの薄さだ。trap のループはビートを背負うが、drill のループは一歩下がって、ハイハットとスネアに背負わせる。だから16音ではなく4音を書き、ドラムを切った状態で確認する。単体で寂しく聞こえるなら、たぶん正しい。
そのバランスが仕上がった例が Brixton だ。スライドする 808 が暗いループの下を走り、ドラムが動きを保っている。
UK drill と NY drill は同じビートではない
ロンドンのものは遅くて余白があり、スライドする 808 がかなり前に出て、ハイハットはしっかり足を引きずる。Pop Smoke とともに大西洋を戻ってきたニューヨークのものは速くて攻撃的で、サンプリングやオーケストラのループに寄りかかり、スネアと同じくらいキックで押す。3+3+2 の考え方は同じでも重さが違い、互換性はない。ロンドンのスライドにニューヨークのヴァースを乗せると鈍く聞こえ、ニューヨークのパターンにロンドンのフロウを乗せると急いでいるように聞こえる。
構成:ドロップに戻ってくる場所を作る
drill のイントロは短い。ドラムなしのメロディ4小節、あるいは全部フィルターをかけた8小節で、そのあとにフルのパターン。ドロップは、その前になにか足りなかったときだけ効く。だからイントロの最後の1小節で 808 を抜く。ヴァースでは最初の4小節メロディを消し、フックでは抜いていたハイハットの音を戻し、808 を2倍の頻度で滑らせる。同じ3つの要素を密度だけ変える。これが、ブリッジなしで2分のビートを飽きさせない方法だ。
作りながら出てくる疑問
drill beat にサンプルは必要か
要らない。ベルやギター、ピアノのプラグインでゼロから弾くループも多い。サンプルは質感には効くが、クリアランスには金と時間がかかる。売る予定のビートなら、自分で弾いたループのほうが安全だ。
drill beat のテンポは
ほとんどが140前後で、ハイハットは足を引きずるように書き、スネアは遅れて鳴る。UK drill はその範囲の低い側に寄り、NY drill はもう少し速く押す。3+3+2 が駆け足ではなく歩きに感じるテンポに合わせる。
自分の drill beat が trap に聞こえる理由
ほぼ次の3つのどれかだ。まっすぐなハイハット、3拍目のスネア、繰り返すだけで滑らない 808。まずドラムを直す。drill でないパターンをメロディで救うことはできない。
自分のを書く前に完成形のパターンを聴きたいなら、カタログの UK drill のインストゥルメンタル はどれもこの作りで、ビートカタログの残りにもスライドする 808 の暗い素材は多い。音の背景はdrill とは何かの記事で、どこから来てロンドンとシカゴの版がどう分かれたかを扱っている。

